
月の満ち欠け
佐藤 正午
累計読者数8
平均ハイライト数 6件/人
star総合評価 52/100
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この本について
日常を生きていると、「自分が見ている現実は本当に“正しい”のか」とふと立ち止まる瞬間がありませんか。思い込みだったのか、記憶がぼやけているだけなのか、それとも別の可能性があったのか。そんな曖昧さに振り回されるとき、答えを急ぐほど余計にわからなくなることがあります。 『月の満ち欠け』を読んでいると、登場人物たちがまさにその揺らぎの中でもがき続けていて、自分の迷いと地続きに感じました。事実と解釈のあいだで立ち尽くす感覚とか、会えばのめり込み、会わなければ現実が曇るようなあの不思議な錯覚とか、忘れたくない記憶ほど形を変えていくこととか。読みながら「そうそう、現実ってこんなに頼りない」と、変に救われる瞬間が何度もありました。 この物語が効いてくるのは、現実を上書きするのではなく、「受け入れる」という言葉の温度を、少しだけ別の角度から触らせてくれるところです。生まれ変わり云々を信じるかどうかは人それぞれですが、常識に押し込められて追放した自分の感覚を、もう一度拾い上げてもいいのかもしれない──そんな柔らかい余白を残してくれます。曖昧なままでも前に進めること、確かめられないものを抱えたまま人は生きていくのだという、ごく当たり前だけどなかなか言葉にしづらい事実を、物語の形でそっと思い出させてくれました。 「記憶や感情の“揺れ”をごまかさずに向き合いたい人」に、静かに刺さる一冊です。
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