
別冊NHK100分de名著 読書の学校 若松英輔 特別授業『自分の感受性くらい』
若松 英輔
NHK出版 / 2019-02-25
この本について
仕事のことで落ち込んだり、人間関係で言葉をうまく選べなかったり、ノートに向かっても「何を書けばいいんだろう」と手が止まる日ってありますよね。自分の感じ方が鈍っているのか、それともそもそも何も感じていないのか。そんなふうに勘違いしてしまう時期が、僕にも長くありました。 この本が少しちがうのは、「読む」と「書く」を呼吸のように往復させることで、鈍ったように見えていた感性が静かに動き始めるところです。誰かの詩を書き写してみると、なぜか世界の輪郭が変わって見える。書くことで何を表現できたかではなく、「書いてみて自分がどう揺れたか」を手がかりにしていく。そうやって言葉に触れると、自分の中にある可能性がまだ死んでいなかったことに気づけるんです。また、正しい読み方を求めなくていいという姿勢にも救われます。意味を当てにいくのではなく、書かれなかったものに耳を澄ませる。これは、仕事の資料を読むときでさえ視点が変わる経験でした。 詩を特別なものとして扱うというより、ただ「自分の心をもう一度使ってみる」ための方法として紹介されているのが、この本の現実的で好きなところです。誰かに見せる必要もなく、まずは一つの詩を自分の手で書き写してみるだけでいい。そんな小さな行為が、自分の足元を照らす言葉になって戻ってくる。 感性が弱った気がしている人や、自分の言葉を失いがちな時期にいる人には、とくに静かに効いてくる一冊だと思います。
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