
とりあえずお湯わかせ
柚木 麻子
NHK出版 / 2022-10-19
この本について
最近、思っていたよりずっとしんどいはずなのに「まあ、これくらい」と流してしまうこと、多くないでしょうか。怒ったり、疲れたり、呆れたりしている自分を認めるのが下手で、でも黙っていると余計に気持ちがこじれていく。私自身も、家や仕事のことで落ち着かない時期ほど「ちゃんとしなきゃ」に縛られて、逆に何もできなくなることがあります。 『とりあえずお湯わかせ』は、そういう“自分のままではいられない感じ”を、一度ふっとほどいてくれる本でした。といっても、前向きになれとか、育児は尊いとか、そんな教えをくれる本ではありません。むしろ、怒ってしまう自分も、不器用な自分も、混乱してる自分も「それで普通」だと地に足のついた目線で描いてくれる。その結果、読んでいるこちらの力が少し戻ってくる感じがあります。 個人的に効いたのは三つあって、まず「怒りを恥じる必要はない」という視点。怒る自分を否定した瞬間にしんどさが倍増する、という描写が妙にリアルで、私も思い当たるところだらけでした。次に「完璧じゃなくても人とつながれる方法」。家を解放して持ち寄りで過ごす話なんて、すぐに真似できるわけじゃないけど、孤立しない工夫にはこんな軽さがあっていいんだと気づきます。そして「何もできない時はお湯を沸かせ」という小さすぎる一歩。これが本当に効く。停滞しているときほど、このくらいでいいんですよね。 完璧に整っていない日々をなんとか回している人、特に「疲れてるのに弱音が出てこないタイプ」に静かに刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
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