
ドキュメント生還-山岳遭難からの救出 (ヤマケイ文庫)
羽根田 治
この本について
仕事でも日常でも、自分だけ取り残されているような感覚って、ときどき急に襲ってきますよね。周りは普通に動いているのに、自分だけ別の場所に取り残されているようなズレ。うまく言葉にできないあの疎外感に、思い当たる人は多いんじゃないでしょうか。 『ドキュメント生還』を読んでいて、保存されていた一文の「旅客機の音がやりきれなく聞こえる」という描写に心が止まりました。極限状態という特殊な状況のはずなのに、不思議なくらいふだんの孤独感と地続きに思えるんです。人は追い詰められたとき、世界との接点が細くなるほど、自分がどこに立っているのかわからなくなる。その感覚を、羽根田さんは過度に dramatize せず、淡々と記録として積み重ねていきます。その冷静な距離感が逆に「自分の中にも似た部分がある」と静かに響いてきました。 この本が効いてくるポイントは、まず、遭難者の心理の揺れを追うことで、自分が抱えている不安の正体が少し輪郭を持ちはじめるところ。もうひとつは、救助のプロたちの判断や動きから、「人は絶望の場面でも、こんなふうに一歩ずつ選び直していけるのか」という視点をもらえるところです。大げさに勇気づけるわけではないけれど、自分の生活にも置き換えられる小さな手がかりが確かに残ります。 日々の中で、自分の居場所がよくわからなくなる瞬間がある人に刺さる本だと思います。極限の記録なのに、読むとむしろ静かに自分の輪郭が戻ってくるような一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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