
最後の将軍 徳川慶喜 (文春文庫)
司馬遼太郎
文藝春秋 / 1997-07-10
この本について
仕事でも人生でも、「能力はあるのに一歩踏み出せない自分」とか、「周りの期待と自分の本音のあいだで揺れる感じ」に心当たりがある人、多いと思うんです。僕もその一人で、どうしても“胆力”とか“決断”みたいな言葉に弱いまま過ごしてきました。 司馬遼太郎の『最後の将軍 徳川慶喜』を読んでいて刺さったのは、慶喜がまさにその揺れの極致にいる人物だということです。才能は抜きん出ているのに、歴史のど真ん中で「前に出るのか、退くのか」を何度も迷い続ける。その姿を覗き込むと、自分の悩みが「性格の問題」みたいに単純化できないと気づかされます。権力に近づけば近づくほど自由が減り、選択肢も狭まり、評価は能力ではなく“立場”で決まる。そんな不条理に慶喜自身が苦しんでいく描写は、現代の組織で感じる窮屈さと地続きに見えました。 特に効いたのは、慶喜が「逃げ道を用意してから動く人間」であるという指摘です。弱さに見えるけれど、僕らの多くが同じように動いているのではないか、と妙に腹落ちします。また、彼が先を読みすぎて身動きが取れなくなるところは、過剰にリスクを想定して何も始められない自分の姿と重なりました。歴史の大人物を“等身大の迷う人間”として描くことで、むしろこちら側の視点が整っていく感覚があります。 歴史そのものより、「賢さと胆力が一致しない人間の生き方」に興味がある人には、とても静かに刺さる本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの24%が集中しています。
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