
岳飛伝 八 龍蟠の章 (集英社文庫)
北方謙三
集英社 / 2017-06-27
この本について
最近、仕事でも人間関係でも「どう振る舞えばいいのか」がよくわからなくなる瞬間が増えてきました。強く出れば雑になるし、慎重になれば腰が引けるし、どちらにしても自分の芯が定まっていない感じがして、もやっとしたまま動いてしまう。抜け出したいけれど、妙手もない。そんな時に、この巻を読んでいて立ち止まりました。 岳飛伝の八巻は、派手な戦の場面よりも、人物の“あり方”がじわじわ効いてきます。たとえば、叱られて数刻落ち込むけれど、次の仕事が始まれば切り替えて動き出す武官の姿。過去の肩書きを誇るでもなく、失敗を引きずるでもなく、「いまやるべきこと」にゆっくり戻っていく感じが妙に現実的で、自分の小さな落ち込みにも居場所を与えてくれるようでした。また、耶律越里のように、普段は鷹揚そのものなのに、一度戦になれば兵の指先まで見るような集中を発揮する人物も出てきます。だらしなさと緊張感が一人の中に同居していて、その揺れ幅がむしろ人間らしい。 さらに、商人が「命を持っている者として、生きたい」とこぼす場面も印象的です。立場や役割ではなく、自分がどう生きたいか。抽象的に考えると重たいのに、物語の中では生活の延長線上にその問いが出てくる。だから、こちらも肩に力を入れずに向き合える。なにかが変わったと気づく劉剛の描写も含めて、「ゆっくり変わっていく自分」を許せる物語だと思いました。 迷ったまま動いてしまう自分を、少し外側から見てみたい人に刺さる巻です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの17%が集中しています。
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