
近代日本と軍部 1868-1945 (講談社現代新書)
小林道彦
講談社 / 2020-02-13
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この本について
近代日本の軍部って、学校で習った説明だとどうも腑に落ちない…そう感じたまま大人になってしまった人、多いと思います。天皇と軍部の関係も、政党政治が崩れていく流れも、「なんとなく」理解しているだけで、実際に何が起きていたのかは霧のまま。自分もずっとそのモヤモヤを抱えていました。 この本が面白いのは、歴史を大きな物語としてではなく、「制度」「身分」「現場の力学」から見直してくれるところです。たとえば、天皇の権威が常に絶対だったわけではなく、陸軍の力が弱まったタイミングでしか実力を発揮できなかったという指摘は、固定観念を揺さぶられます。また、軍隊も政党も士族の解体から派生した“一卵性双生児”という視点は、維新以降の日本が抱え続けた矛盾を立体的に見せてくれます。さらに、青年将校がなぜ幕末志士に自分を重ねたのか、その心理的背景を制度史から説明してくれるのもありがたいところです。 大声の議論や単純な善悪で語られがちなテーマを、過度に煽らず、しかし淡々ともしていないバランスで整理してくれるので、歴史の距離感がぐっと近づきます。表面的な理解のままでは気持ち悪い、というタイプの人には特に刺さるはずです。
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出版社による紹介
「近代理性の象徴」のはずであった組織はなぜ暴走したのか? 明治維新から太平洋戦争敗戦による崩壊まで、一人で描ききった超力作! 戦前日本の歴史とはある意味において、相次ぐ戦争の歴史でした。といって、日本が明治維新以来一貫して軍国主義路線を取っていたわけではありません。しかし結果として、後世の目から見るとそうみなさざるを得ないような「事実」の積み重なりがあることも、やはり否定することはできないでしょう。 では、このような「意図」と「結果」との大きな乖離は一体なぜ起こったのでしょうか。 明治憲法体制とは、極論すれば大急ぎで近代国家の体裁だけをこしらえた、「仮普請」にすぎませんでした。そのことは伊藤博文をはじめとする元勲たちもよくわきまえており、伊藤などは折を見て、より現状に即した形での憲法改正にも取り組むつもりでした。 著者によれば、明治憲法体制の改正が唯一可能だったのは、その起草者である伊藤が憲法改革に取り組もうとし、また軍部自体もその必要性を認めていた日清戦争後の時期しかなかったということです。しかし日露戦争での奇跡的な勝利により、この改革への機運は急速にしぼんでしまいました。またその後、桂太郎、児玉源太郎、宇垣一成、永田鉄山といった近代軍の「国家理性」を体現したリーダーたちがあるいは早世し、あるいは失脚し、暗殺されるという不運もありました。そしてついには軍が政治を呑み込み「国家」自体となるまでにいたります。東条英機が首相のまま複数の大臣を兼任し、さらには陸軍相、参謀総長を兼任するまでに至ったことは、まさにその象徴と言うことができるでしょう。 「仮普請」でしかなかったはずの明治憲法体制が、政治リーダーの世代交代を重ねるに従って「デフォルト」となり、次第に硬直化してゆく。当初、政治の軍事への介入を阻止するために設定されたはずの「統帥権」が逆に軍が政治をコントロールする道具になってしまったことなどは、それを象徴する事例でしょう。組織としての宿命とはいえ、改革の機を逸した代償はあまりにも大きかったとやはり言わざるを得ません。 本書では、歴史を後付けではなく、極力「リアルタイム」で見ることを目指し、近代日本最大のパラドクスである「軍部」の存在の謎に迫ります。
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