
半沢直樹 アルルカンと道化師
池井戸潤
講談社 / 2020-09-17
この本について
仕事を続けていると、「努力しても越えられない壁ってあるんじゃないか」とか、「上の指示がどうにも腑に落ちないけど、従うしかないのかな」といったモヤモヤにぶつかることがあります。自分の理想を語るのは青臭い気がするし、かといって割り切るほど器用でもない。その狭間で足が止まること、僕もよくあります。 『半沢直樹 アルルカンと道化師』は、そんな行き場のない感覚に、少しだけ呼吸のしやすい視点をくれました。たとえば「才能には越えられない川がある」という冷徹な現実と、「理想のない仕事に、ろくな現実はない」という言葉が同じ物語の中に共存しているところ。どちらかに振り切るのではなく、現実と理想を同時に抱えて働く人間の揺らぎが、そのまま描かれています。だからこそ、自分の弱さや迷いが否定されず、そのうえで一歩前に進む感覚が持てるんです。 さらに、表と裏のどちらも見ないと真実に辿り着けないというテーマも、職場の理不尽や不可解な判断に対して、落ち着いて距離を置くきっかけになります。人の行動や会社の決断には、外から見えない事情が必ずある。その前提を持てるだけで、目の前の対立や感情に巻き込まれにくくなると思います。そして「自分のためではなく、誰かのために動くときに感じる幸福」は、仕事の意味を思い出させてくれます。見返りではなく、人との関係に寄りかかる形でエネルギーを取り戻せる感覚に近いです。 現実を見ないわけにも、理想を捨てるわけにもいかない。その間で揺れている人に、静かに効いてくる一冊です。
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多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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