
しらふで生きる 大酒飲みの決断 (幻冬舎文庫)
町田康
幻冬舎 / 2021-12-09
この本について
仕事で疲れた日の夜、なんとなく「今日くらい飲んでもいいか」と思ってしまう瞬間ってありますよね。飲んでいるときはそれなりに楽しいのに、翌朝になると後悔がじんわり残る。かといって完全にやめる覚悟なんて持てないし、そもそも自分は“そこまで深刻じゃないはずだ”と自分に言い聞かせてしまう。そんな揺れる感じに、町田康さんの『しらふで生きる』は妙に刺さります。 この本の効き方は、いわゆる禁酒本とはだいぶ違っていて、まず「酒の楽しみって、ほんとうに楽しみだったのか?」というところから静かに揺さぶってきます。酔いは数時間で消えて資産として残らず、負債だけが積もっていく、という感覚は自分でも薄々わかっていたのに、言語化されると妙に現実味を帯びる。そして厄介なのは、酒がくれる“確実なご機嫌”への誘惑で、ここを突かれると、ああ自分もその回路に頼っていたかもしれないと認めざるを得ないんです。 もうひとつ響くのは、「人生はもともとそんなに楽しくない」という前提の置き方です。これだけ聞くと少し暗く見えるけれど、実際にはむしろ救いに近くて、無理に気分を盛り上げたり、酒で帳尻を合わせたりしなくていいんだ、と肩の力が抜けていく感覚があります。しらふでいると最初は味気なくても、些細なことをちゃんと喜べるようになるという描写は、依存ではない“普通の楽しさ”を取り戻す感じに近い。 強い決意で断酒を語る本ではなく、自分の中の正気と狂気がせめぎあう泥臭い時間をそのまま差し出してくれる本です。飲みすぎている自覚はうっすらあるけど、誰にも相談できずにモヤモヤしている人にこそ届くと思います。
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多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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