
脳科学者の母が、認知症になる 記憶を失うと、その人は“その人”でなくなるのか? (河出文庫)
恩蔵絢子
累計読者数11
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この本について
介護や家族の変化に向き合っていると、「昨日までできていたことが、なぜ今日はできないんだろう」「これって“その人らしさ”が失われていくということなのか」と、不安と戸惑いがいっしょに押し寄せてきます。自分の捉え方が合っているのかもわからないまま、正解のない時間だけが過ぎていくような感覚になることもあります。 この本は、そういう揺れの中にいる人に、いきなり励ますわけでも希望を大げさに語るわけでもなく、「何が起きているのか」を丁寧に整えてくれます。記憶がどう作られ、どう取り出されるのか。それが壊れていくとき、本人の行動にどんな“ズレ”が生まれるのか。そして、そのズレを周りが「病気のプロセス」として受け止めた瞬間、本人の表情が少し和らいだというエピソードが、ただの知識ではなく、日々の接し方を少し変える足がかりになります。 もう一つ、この本が静かに効いてくるのは、「失われていくもの」だけで人を見なくなる感覚です。できないことが増えていく一方で、役割を持てたときの安心や、自分で選べることがあるときの幸福度、香りや音楽のように記憶の奥に届く刺激は確かに残り続ける。その“残っているもの”に目を向ける視点は、介護の現場だけでなく、人との関わり全般に作用する気がします。 家族の変化に向き合うたびに、自分の感情の扱いに迷ってしまう人に届く本です。
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